<<ほぼ日替わりコラム>>

わいせつ被害の地下アイドル 名前の公表は本当に必要?
代官山太郎
今月、地下アイドル界を震撼させる事件が起きた。9月17日に、7人組アイドルグループ「天使突抜ニ読ミ」のメンバー・松岡笑南がファンの男に自宅マンションのエントランス付近で待ち伏せされ、わいせつな行為をされたのだ。男は無職・26歳の佐藤響容疑者で、強制わいせつ致傷の疑いで警視庁に逮捕された。

この事件、当初の報道では被害者であるアイドルについては名前や所属グループなどが伏せられて報道されたが、同グループの運営会社が公式ツイッターで「天使突抜ニ読ミよりご報告」と題し、被害を明らかにした。
「先日より長期休養しておりました松岡笑南について、ニュースでご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、強制わいせつ致傷の被害者となっておりました」「あってはならない行為ですし非常に遺憾です。天使突抜ニ読ミとして、松岡笑南として、断固として戦う所存です」と述べている。

松岡の状態については、「アイドルの命といってもいい顔に傷を負わされ、精神的にもかなり厳しい状態にありますが、毎日のように連絡を取っており、徐々に回復へ向かっている最中です、幸いという書き方はよくないのかもしれませんが、顔面の傷と背中の傷で済んだこと、強制わいせつ『致傷』というところで未遂で終わったことも不幸中の幸いだと考えております。復帰へ向けて、松岡はいま頑張っております」としており、犯行の態様がきわめて悪質であったことを物語る。

しかし、この公式発表がセカンドレイプにつながるのでは?という疑問の声も出ている。同運営としては、再犯防止や他のアイドルへの注意喚起などの観点から、業界全体を守ろうという気持ちのもと、松岡本人や親も含めよく話し合いをしたうえで公表を決めたとしている。

一応、大義名分はあるわけだが、果たして公表する必要が本当にあったのだろうか。というのも、以前、まったく別のアイドルグループでやはりメンバーがファンに自宅で襲われた事件があり、その際にその運営会社の社長が積極的に被害メンバーの名前を公表したのをはじめ、その後も順次各メディアに被害メンバーをはじめとするメンバーたちの宣材写真や新たなリリース情報やイベント情報などを「これ幸い」と積極的に送りつけてきたことがあったからだ。本人への取材も受け付けるというものだった。ネームバリューのない地下アイドルだったので、結局、それを取り上げるメディアはなかった。

うがった見方かもしれないが、うがって見るぐらいでちょうどいいのが芸能の世界。被害に遭った女性の心身の回復を望みつつも、どうしても釈然としないものが今のところは残る。
2019/9/25


代官山太郎のコラム一覧へ
コラムニスト一覧へ
日替りコラムTOPへ

芸能!裏チャンネルTOPへ

(c)StockTech.Inc
(c)Time Inc.