<<ほぼ日替わりコラム>>

佐藤健、有村架純、波瑠…大炎上ドラクエ映画は黒歴史になるか?
代官山太郎
8月2日から公開された3DCGアニメ映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」(山崎貴総監督・脚本)が、思わぬことで話題の的となってしまった。佐藤健が声を演じる主人公リュカの名前が小説版の盗用にあたるとして原作者から訴えを起こされたり、映画のストーリーがドラクエファンやゲームファンの気持ちを逆なでしているというのだから穏やかではない。

同作は、ロールプレイングゲームの傑作「ドラゴンクエスト」シリーズの中でも、大河ドラマ的物語の壮大さが定評のある「ドラゴンクエストX 天空の花嫁」をベースにした作品で、ドラクエ世代を中心に公開前から話題を呼び、興行成績も上々と、余計な騒ぎさえなければ順風満帆そのものの展開を見せていた。

ところが、やがて鑑賞した人々から内容に対する酷評がネットに殺到することとなった。中でも最も評判を落としたのが、本来ならクライマックスとして最高に盛り上がるはずの終盤のラスボスと戦うシーン。PCがフリーズを起こしたかのように突然画面が静止し、それまでの物語の世界観がコンピュータウイルスによって崩壊していく。実はすべて、ゲームの中のヴァーチャル世界のお話だったのだというオチだ。総監督の山崎氏はゲームとしてのドラクエへのリスペクトも込めたつもりだったのかもしれないし、これはグッドアイデアだと思ったのかもしれないが、まったく裏目に出てしまった。ネットには、「ゲームユーザーをバカにしている」「作り手の思い上がり」などと酷評を受けてしまう結果に。さらには、主人公の名前リュカが小説版からの盗用だと、原作者が訴える騒ぎまで起きて追い打ちをかけられてしまった。

映画自体は3DCGのクォリティーも見事で、声優陣も佐藤健以外にも有村架純、波瑠、吉田鋼太郎などなどオールスターの豪華さ。それだけにあの展開には疑問を感じた人が多かった。

何しろ上映が始まって終盤まで見事なまでの映像美でドラクエの世界を見せて、見る側もドラクエの思い出に浸りきるほど感情移入をさせたその絶頂で、すべては虚構で、しかも幼稚なものだと、鑑賞者はおろかゲームユーザーすべての気持ちを足蹴にするようなまさかの展開。フィクション作品を愛好する素晴らしさを逆説的に肯定して見せたかったのだろうが、その意図は完全に外れているとしか言いようがない。

豪華キャスト陣の黒歴史にならなければ良いのだが。

2019/8/20


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